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【ドラマ】カルテット 第10話 感想

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前回の感想はコチラ。

第10話あらすじ(TBSより引用)

罪を償うため、出頭した真紀。
バラバラになってしまった、カルテットドーナツホール。
それから一年後、彼らはそれぞれ別の道を歩んでいた。


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ハイライト

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好きなカット。

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『いつ恋』にも似た台詞が出てきましたね。

私たち、今、かけがえのない時間の中にいる。
二度と戻らない時間の中にいるって。
それぐらい眩しかった。
こんなこともうないから、後から思い出して
眩しくて眩しくて泣いてしまうんだろうなあって。



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真紀の不在と週刊誌報道により、第9話で司が恐れていたことが起きています。

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坂元裕二作品では"悪意"を取り上げることが多いです。
今話も"悪意"が出てくるのですが、従来と描き方が少し違っています。
これは後ほど。

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真紀から司に語られた言葉の意味を司は初めて痛感しています。
ここでこのフレーズをもう一度持ってくるのは素晴らしいですねー。

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ここで春雨を食べているのには意味があると思います。

春になるとリスが来るそうです。
雨宿りしながら春の雨を見上げるんですって。
春になったら見ましょうね。

これは第9話に出てきた台詞ですが、春の雨と春雨をかけているのだと思います。
つまり、"春雨を食べている=真紀の帰りを待つ"といった意味です。
最初はすずめと諭高だけが春雨を食べていて、
司は真紀に対してもう帰ってこないのではないか、
といった疑惑を持っていますが、最終的には春雨を食べます。
つまり、真紀の帰りを待つことを選ばされると!!
結局、待たずに真紀の元に行くわけですが、それにしてもお見事です!!

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坂元裕二の世界という感じが出まくってます。

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"届ける"というのが今話の最大のテーマです。

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いい言葉ですね。
平たく言えば自分のした選択を後悔しないことに責任を持つことだと思います。

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初めまして。
私は去年の冬、カルテットドーナツホールの演奏を聴いたものです。
率直に申し上げ、ひどいステージだと思いました。
バランスが取れてない。ボウイングが合っていない。
選曲に一貫性がない。というより一言で言って
みなさんには奏者として才能がないと思いました。
世の中に優れた音楽が生まれる過程で出来た余計なもの。
みなさんの音楽は煙突から出た煙のようなものです。
価値もない。意味もない。必要ない。記憶にも残らない。
私は不思議に思いました。
この人たち煙のくせに何のためにやってるんだろう。
早く辞めてしまえばいいのに。
私は5年前に奏者を辞めました。
自分が煙であることにいち早く気付いたからです。
自分のしてることの愚かさに気付き、スッパリと辞めました。
正しい選択でした。
本日、またお店を訪ねたのはみなさんに直接お聞きしたかったからです。
どうして辞めないんですか。
煙の分際で続けることに一体何の意味があるんだろう。
この疑問はこの1年間ずっと私の頭から離れません。
教えてください。価値はあると思いますか。
意味はあると思いますか。
将来があると思いますか。
なぜ続けるんですか。
何で辞めないんですか。
なぜ?教えてください。お願いします。

伝家の宝刀こと手紙が出てきました。
"価値もない。意味もない。必要ない。記憶にも残らない。"
こういうことを考えるとき、なぜ他人目線でしか考えられないんでしょう。
自分にとって価値があり、意味があり、必要で、記憶に残ればそれで十分じゃないでしょうか。
届ける対象はなにも他人でなくても構いません、自分だっていいのです。
それが続ける理由にならないわけがありません。
(これは私の考えであり、カルテットメンバーの考えとも少し異なっています。)

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全員ボーダー、全員白黒。

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このシーンを見てなぜ有朱という人物を登場させたのかが分かりました。
詳しくはまとめで触れます。

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このルーティンいいですねー。

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投げ込まれる缶(悪意)とカルテット結成時の回想。
缶については後で触れるとして、回想はよくここまでとっておいたなと思いました。

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先ほどの手紙の差し出し主です。

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第1話で出てきた中学生です。

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これは映像作品においてもいえることですが、
ドラマなり映画なりを作るにあたって、多くの人が裏で働いています。
日本ではキャストや視聴率など目に見えるものを評価する風潮*1があり、私はもどかしく思っています。
そんなわけで私は演出などにも着目した感想記事を毎度書いています。

カルテットでは(あまりないことですが)フードスタイリストの方たちも参加されています。
そういった目に見えない人たちが参加されていること・何をしていてなぜ必要なのか(できれば)を
考えられると映像作品の見方はさらに深みを増していくはずです。

まとめ

さて、カルテットが終わってしまいました。
ラストからわかるように何か劇的な変化があったり、大きな決定を下したわけではありません。
しかし、これを日和りなどとは考えないでいただきたいです。

カルテットの大きなテーマは2つでした。

  1. アリとキリギリス
  2. 不可逆

「アリとキリギリス」は最初からずっと流れているテーマですが、第10話でも同じように取り上げられています。
それがあの手紙でもあるわけです。
カルテットメンバーも手紙の差し出し主と同じようにアリになるかキリギリスになるかというところに焦点を当ててずっと考えてきました。
私はその一種の呪いとも言えるものから解放されたのが第10話であると思っています。
それがあの「全員ボーダー、全員白黒」です。
アリとキリギリスという寓話は【どちらの生き方が正解】かを決めるものではありません。
【生き方に正解はない】ことを教えるものなのです。

なぜ有朱に「人生チョロかった」と言わせたのか?
それは有朱という人生ももちろん正解だよね、ということを表すためです。
何の脈絡もなく有朱が(世間的に言う)いい人になっていたら、
それは今までの有朱の人生の否定になってしまうため、そうしていないのです。

手紙の差し出し主も(自分の中の)正解は自分で決めるしかありません。
ただし、その選択は「不可逆」であることを忘れてはいけません。
繰り返しになりますが、【自分のした選択を後悔しないことに責任を持つこと】が"生きる"ことです。

「届ける」といったことにも触れておきましょう。
今話では第1話で出てきた中学生がコンサートに来るなど"届く"人には"届く"といった表現がありました。
素晴らしいのは手紙の差し出し主のその後を描いていないことです。
"手紙の差し出し主がまた楽器を始めた→気持ちが届いたんだ!"という単純な演出も出来たはずです。
それを描かないと言った選択は見事だと思います。

そして、忘れてはならないのが"悪意"についてです。
坂元裕二作品では不用意な悪意を描くことも多々あるのですが、今回は少し違います。
真紀の住む部屋のドアをドンドン叩かれた"悪意"と缶が投げ込まれた"悪意"は違います。
やってる側からすれば同じなのですが、受け取り側からしたら違います。
何が違うかというと、缶が投げ込まれた"悪意"は届いていないのです。
カルテットの"音楽"が届かないことがあるように、"悪意"にも届かないことがあるのです。
これはやはりメンバーの存在が大きいと思います。
ここが坂元裕二ならではの白眉な点ですね。

カルテットの面白い点は、(公式にも取り上げられていましたが)解釈がひとそれぞれ存在することだと思います。
ニーチェの言葉ではないですが、事実ではなく解釈がそれぞれあるということです。
坂元裕二の中の解釈も事実ではないのです。
今回は特に他の方の感想を読むことも多く、いいドラマに成長したなあと感慨に浸りました。

土井さん、金子さん、坪井さんによる演出*2
fox capture planによる音楽*3やその他の方たちのお仕事も素晴らしかったです。*4

約3か月間、とても楽しませてもらいました。
私自身は感想が度々遅れるという体たらくでしたが、こうしてなんとか完走することができてホッとしています。
この感想を見続けてくれた方、ありがとうございました。
もし坂元先生の次回作品があったら一緒に完走しましょう。

★カルテット各話感想

*1:キャストだけが番宣をするのは絶対におかしいと思う

*2:第6話だけ突っかかってますが

*3:「冬の風」が私のお気に入り

*4:カルテットを模したCMのクオリティがひどすぎて本編のクオリティの高さを再実感するというのも面白かった