SWITCHインタビュー 達人達「新海誠×川上未映子」を観ました。
とても良かったので、感想を書きます。
映画の内容にはあまり触れてませんが、「君の名は。」についても触れてますので、ネタバレ注意です。
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正解と死
この感覚、めちゃわかる。
自分にとっての正解があって、そこにたどり着けないだろうっていうことが「分かってしまう」気持ち。
私はスタートとゴールを決めて、そこに向かって文章を書き出すということがとても苦手で、
そうした場合は大抵挫折して、下書きのまま眠ってしまいます。
なので、これだけは欠かせないことやフレーズをポンポンと並べて、
短文を作っていって、最後にそれを並び替えて、文章を構成していきます。
学生時代の作文や小論文はホントに苦手で、文章を書くことはあまり好きではなかったけど、
この方法で文章を書くことは好きになった気がします。
死生観はあんまりわからないかも。
死ぬことが怖いということは、あんまり感じていなくて。
どちらかというと解放とか安堵に近い。
死神を映像化するならば、フレンドリーな外見になると思う。
川上さんは、電球を見たときに、いつか切れてしまうことが怖いと思うのかな。
承認
何回か書いたような気がしますが、私は自分を「生かす」ことが得意で、自走できる人間です。
誰かに認められなくても自分で自分を認めてあげているし、それに満足できます。
私は昔から「変わっている」ということを言われがちでした。
人々は決まって、その考えを持っている人が「多数」か「少数」かということを気にしていて、
少数の人々を「変わっている」という檻に詰め込みました。
そうすることで、自分が「普通」から外れていないことに安堵し、
アイデンティティーを保っているようにも見えました。
川上さんは「自分の考えを言葉に出してはいけない」という思いを小学生の時に抱いていましたが、
作文に書いた自分の考えを先生に褒められたのが嬉しかったという思い出があるようです。(上のキャプチャ)
このエピソードは何回も話しているし、これが原体験なんだろうな。
番組の後半では、新海さんも承認された時の思い出が映画作りのモチベーションになっているというエピソードが。
承認、という行動は「人を生(活)かす」ということを改めて感じました。
今では自分のプリミティブな気持ちを大切にしていて、
この人好きだ、と思う人には好きと伝えていたり、いいと思うところはいいと言っています。
私の中ではある種暴力的な一面があるとも思っていましたが、エゴい考えで言えば、
それが意図しないところで、承認になり得ることもあるんじゃないかなということで、良しとしています。
批判をするのは簡単だけれど、人を生かす肯定、承認をするのは難しい...。
特に感受性が強い人たちを生かすことができたらいいなあと最近考えています。
イノセンス それは、いのち
この質問がポンと出るところに、川上さんの感性の素晴らしさを感じます。
新海さんのイノセンスは12〜13歳で季節は冬。
「寒さとその寒さの中で見る星の瞬きみたいなもの」。
私のイノセンスは「冬の坂道」です。
坂を登るのか下るのか、そこには明確なイメージはなく、
私はどこにも立っていないのですが、はっきりと姿形が浮かびます。
坂の一番下には大きく白い文字で「とまれ」と書いてあって。
モテキで幸世が自転車で下る坂がかなりイメージに近いです。
走る
新海さんが、「走らないと出てこない気持ちがある。」
といったあとに上記のことを言うわけですが、私にとって物凄い気付きでした。
「走る」という行動にあまり着目してこなかったので。
岩井俊二のMOVIEラボで「走る」というテーマが取り上げられた時も、
なぜ走る?ぐらいの気持ちだったんですが、今回のこの言葉でよりさらにスッと入ってきました。
質問
川上さんの質問が好きです。
上の質問は、絵を描くときに何に惹かれていたか聞いたときのもの。
下の質問は、新海さんに過去作の映像を見させているときに出てきたもの。
自分の住んでる世界を表現するのに、一番手っ取り早い手段は話すことだと思います。
でも、人に質問するときにもそれが無意識的に出てくるんですよね。
モノローグと音楽
新海さんは音楽に対してとても真摯な人です。
「言の葉の庭」で音楽に柏さんを起用するといったときには、こんなエントリを書いています。
Other voices-遠い声- » 新作アニメーション「言の葉の庭」の音楽について
「君の名は。」でRADWIMPSが音楽、と聴いたときには、
戸惑いこそあったものの同時に信頼もありました。
結果として、それはいい形で裏切られ、普段から劇伴をよく聴いている私も傑作だと思いました。
(ピアノとストリングスという私の2大好きな要素で構成されているのも大きい)
特に良いのが下の2曲です。
「デート」は、シーンと合っていない曲なんですが、なぜ合っていないか、あとのシーンでわかる構造になっています。
これはかなり面白い試みで、素晴らしかったです。
「御神体へ再び」は、純粋に曲自身の素晴らしさです。
君は僕に似ている
私が言ってんのかと思いました。びっくり。
君の名は。
わたしはこれまで、何かを、選んだことがあっただろうか。
わたしは両手のあいだに置かれた携帯電話をみつめながら、そんなことを思った。
この仕事をしているいまも、ここに住んでいることも、こうしてひとりきりでいるのも、
話すことのできる人が誰もいないことも、わたしが何かを選んでやってきたことの、これは結果なのだろうか。
川上未映子 - すべて真夜中の恋人たち
うわべだけの人と付き合いたくないのならば、そういう選択をしなければいけません。
まだ会っていない人の中に、自分にとって大事な人がいると考えるのならば、
本当に思っていることを口に出すこと。
SWITCH
Eテレは大好きで、SWITCHも大好きな番組です。
お互いの作業場に踏み込む、っていうのが素敵なコンセプト。
映画の宣伝って、キャストに映画の見所は?なんて聞くトンチンカンなことをやっているけれど、
監督の思いを汲み取れる人に聞いてほしいと思います。
欲を言えば、監督同士でお互いの映画を宣伝するみたいな番組に期待したいですね。
Eテレさん、どうでしょう。
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