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【ドラマ】いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう 第7話 感想

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前回の感想はコチラ。

第7話あらすじ(フジテレビより引用)

音(有村架純)は、朝陽(西島隆弘)からプロポーズされる。
しかし音は、朝陽が差し出した指輪を受け取ることができない。
朝陽は、そんな音に、返事はいますぐでなくてもいい、と告げる。
音は、帰ろうとしていた朝陽に、練(高良健吾)と会ったことを切り出す。
朝陽は、練には助けてもらったことがあるから力になってあげたい、という音の思いを受け入れるが…。


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ハイライト

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音(有村架純)による開幕婚約指輪落としから7話はスタートです。
朝陽(西島隆弘)はめちゃくちゃショックですね...。

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朝陽の「ダメだって言ったら?」
こういうシーンは、相手の返事を待つか、
その前に耐えきれなくなって、「ウソだよ」というかを見ています。
朝陽は前者を選びました。
音から「会わない」という言葉を引き出すためです。
自分を選ぶ自信があるから出来る選択ですね。

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静恵(八千草薫)から音に渡される鍵。
7話は練(高良健吾)に鍵を渡すお話です。
これもニクイ演出で、朝陽からの指輪を拒む音のカットはこのシーンの対比だと思われます。
純粋に考えてしまうと、練を選ぶということを示唆しているように受け取ってしまうのですが...。

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ツノが生えてました。
佐引(高橋一生)を語り手として、練の祖父の変化が語られます。*1
倒れてしまった後は、怒りと憎しみに狂い、練を練として認識できなくなっていたみたいです。
これつらいよなあ、練の全部自分のせいだと、現在進行形で自分を責め続けてきた様子が目に浮かびます。

そして、佐引さんは震災の年の秋に実家に帰ってるんですね。
この時は練の名刺をもらっていなかったはずなので、その後名刺をもらうために、どこかでまた会ってることになりますね。
練は自分の仕事のことを誇りには思っていないはずだし、前から繋がりのあった関係も切っていっただろうし。
だとしたら、何で名刺を渡したんだろう...無意識下でのSOS?
それとも最初は本当に困った若者を助ける仕事だと思って、今の仕事を始めた?

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練の第2部での「つっかえ棒」登場です。

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渡そうとした鍵は、練に突っぱねられてしまいます。
静恵に対する言葉が「心配かけてすみません。俺のことは忘れてください」というあたり、
練の本質が変わってないことを感じられていいですね。
また、佐引に対して「前は小室哲哉のブレーンだって言ってた」と発言した後の一瞬の微笑、これもたまらなくいい演技でした。

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冒頭にも出てきた静恵さん家の花壇。
あそこに咲く花というのは、静恵さん家に集う人々をまんま表しています。
よく世話をしていた練がいなくなり、元気がなくなってしまった花。
花を咲かすも枯らすも...。

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震災の前日、練に追い返された小夏(森川葵)は一人で過ごしていたみたいですね。*2
その時の恐怖が、5年経った今でもフラッシュバックされるのでしょう。

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木穂子(高畑充希)は音から練の祖父のことを「聞かないでおく」と言います。
絶妙なバランス感覚、個人的にいい線引きだと思います。
その後の「心配っていうのは心を配るって書くんだよ。昔、好きだった音に心を配ったら...。」
というのも視聴者向けの説明としてすごくいいですね。

第1部の練は「引っ越し屋さん」でした。
音を北海道から東京へ物理的に運びました。
それだけではなく、「林田音」から「杉原音」への心のお引っ越しも手伝ってもらっています。
それが第2部ではどうでしょう。
まるで音が練の「引っ越し屋さん」になろうとしていませんか?ということです。

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「再就職困ってるなら、俺紹介しよっか?」
朝陽も完全に壊れています。
そもそも兄をクビにしたのは朝陽です。

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おじいさんが「すみません」という度に、首を振る練。
その姿は第1部の練そのものでした。

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大切な家族写真が中に挟まったマンガを返す練。
第1部で晴太(坂口健太郎)が取ってきたカバンを北海道まで返しに行くエピソードになぞらえています。
上と合わせて、この2つのシーンは、練が「心」を「配」る姿を描くためのものです。

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7話の冒頭で練がカラーコーンを触るのは、このシーンのためです。
カラーコーンが「引っ越し屋さん」であった時の練を想起させるのですね。
またこの作業員たちの姿からも練と佐引さんが浮かんできますね...。

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朝陽と音の根本的な価値観のズレはけっこう厳しそうです。
それにしても音は気持ちがすれ違った時、毎度アッて顔するのやめられないんですかね。

朝陽が「君と幸せになりたいだけなのに」といってしまうのは見過ごせません。
今、朝陽が追い求めているのは、
「音と幸せになること」
「征二郎(小日向文世)に認められること(希望に応えていくこと)」
の2つです。

この2つは、まさに2兎を追うもの...であり、いずれどちらかを諦めなければいけないのですが...。
基本的に朝陽はよく人の気持ちを察してるだけに、この点は残念でした。

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もともと使っていた花瓶に加え、朝陽が持ってきた花瓶にも花を挿す音。
音の優しさを表している場面ですね。
しかし、例えばこの先、「どちらかの花瓶だけ花が枯れてしまったら?」
ということを同時に思わせる、ある意味恐ろしいシーンともなっています。

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音がパジャマに入っていたレシートを読む場面。
音の母からの手紙、木穂子からのメールといったように、
文章から人物の人となりを読み取らせるシーンがよく出てきます。
それの対比として、音たちの契約更新を行わないメールのように、
人となりを読み取らせない"無機質"なものとしても描かれていて。

練の祖父はずっと怒りと憎しみに狂っていたわけではありませんでした。
今の練と同じ姿です。

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練が若者を返すシーン。
親に電話させてるのがお見事。
練が祖父と電話してたシーンも*3ここでさらに活きてきます。

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練と音が座る座席は平行。
そして、練の座席には肥料が。

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よく頑張ったわね。
よく頑張った。
生きてる自分を責めちゃダメよ。
音ちゃんを見てると、音ちゃんのお母さんがどんな人だったか分かる。
練を見てると、練のおじいちゃんがどんな人だったか分かる。
私たち死んだ人とも、これから生まれてくる人とも一緒に生きていくのね。
精一杯生きなさい。

おかえり。


本当に素晴らしいセリフです。
このセリフは1話の音の母からの手紙と重ねています。
音ちゃん(練)を見てると〜のところは、
「ブドウの花はブドウの味がする、バナナの花はバナナの味がする。」
という部分と同じ意味です。
つまり、花が親で実が子を表しています。

これだけではありません。
思い出して欲しいのは、練の祖父が死の直前に"種"を買っていたということです。
つまり、"種"="子"であり、"子"="練"です。
まさに"受継"を意味しているのではないでしょうか。

ここのくだりはもう少し掘り下げることができて、
例えば、3話の木穂子からのメールに、
「同級生が父と母の笑顔を見ていて、「何かのアニメのネズミの笑い方に似てるね」と言いました。」
という文章がありました。
ここのところを拾ってくれるとさらに文句なしです!!*4

私たち死んだ人とも〜のところは、
「愛するって心から心へと残していくことだと思う。」
というところにあたります。

最後の「おかえり。」というのも最高によいです。
4話で練は木穂子に合鍵を渡しました。
そこでは、練は(日向)木穂子の帰る場所を作ってあげました。
今回、直接的には描かれませんでしたが、練は静恵さん家の鍵を受け取りました。
つまり、自分の帰る場所を見つけたということです。
この巡り廻る感じがなんともですね。

6話の音の母によると、恋とは、
「家も仕事もなくなって、どこにも行くところがなくなった人の帰るところ」
とのことでした。

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そして、音を見つめる練。
完璧な構図ですね。
言うことがありません。

まとめ

7話は素晴らしい回でした。
脚本、演出ともに一番の出来でした。絶賛します。
残3話という段階で、無理なく練をもとに戻したことは、続きの脚本を書く上でもやりやすくなったと思います。
これが9話での出来事だったら、収拾つかないまま終わってしまっていたと思うので。
いい舵取りですね。
高野舞さんは4話でも演出をされていた方ですが、今後も覚えておきます。

練の祖父のところはもっと震災を直接的に描くものだと思っていました。
この辺は坂元裕二なりに、いろいろと考えての結果だと思います。
その思考の過程を聞いてみたいです。

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さて、これから先は"再生"の物語が始まってほしいですね。
文字通り、それぞれが再び生きる物語です。
ここに来て心配は朝陽なのですが...。
来週は、朝陽と小夏が動きそうです。音の選択はいかに。

明日への手紙

明日への手紙



★いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう各話感想



*1:このポーズ、かわいい

*2:晴太のいうそん中ってどこなんだ

*3:あのシーンだけでも完璧な出来だったのですが

*4:木穂子「私ってネズミの笑い方に似てるってよく言われるんだよね」みたいな。そして、それを肯定することが大事。