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【映画】海を感じる時をみた感想

「海を感じる時」をみたのでその感想。(ネタバレあり)

予告


あらすじ

恵美子と洋の出会いは高校の新聞部だった。ある日、授業をさぼり部室で暇つぶしをしていた恵美子は、先輩の3年生の洋と顔を合わせる。突然、洋はここで恵美子にキスを迫るが「決して君が好きな訳じゃない。ただ、キスがしてみたい」からだと。衝動的に体をあずける恵美子だったが、あくまで洋は「女の人の体に興味があっただけ。君じゃなくてもよかった」と言い放ち、拒絶する。それでも洋を追い求めていく恵美子だが・・・。


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感想(原作は未読)

  • 池松壮亮(洋)→「愛の渦」以来!意図してやっているとしても棒読みっぽさが多少気になったが、それ以外は総じて良かった。
  • 市川由衣(恵美子)→なかなか恵まれなかった女優だけに、よく引き受けたな感。演技もわざとらしくなくてよかった。

≪演出≫
一貫してテンポが悪い。
劇伴がない映画ということも相まって終始、「間延び」しているような気がしてならない。
この作品は市川由衣が初ヌードに挑戦*1ということで話題になっているわけだが、「ヌード」というものがあまりにも前面に押し出されてしまっていて、ほぼ「AV」に近い印象。
いってしまえば、「ヌード」ありきで作品が存在しているような感じ。

この作品には独白(モノローグ)がないため、観客は場面から状況を理解する必要がある。
また、過去と現在がわりかし頻繁に入れ替わったりするにもかかわらず、トランジションで明示的に分かりやすくしているというわけでもない。
こういった点があるにも関わらず、「分かりやすい」映画ではあるので、その点はいい演出だった。
先ほど「間延び」している印象と書いたが、セリフ量に関しては適切だったと思う。つまり、1シーン1シーンが長い。

≪ストーリー≫
基本的に描かれる世界は狭い。
高校時代の登場人物は、洋、恵美子、恵美子の母しか出てこない。
上京後は、洋、恵美子、恵美子の母、恵美子のバイト先の同僚、サラリーマン(行きずりのワンナイトラブ)と、かなりミニマルな世界だ。

あらすじの続きを説明すると、「あなたが欲しいと思うならそれでいいんです。少しでもわたしを必要としてくれるのなら体だけでも…」というセフレ感満載の恵美子は、
上京した洋を追って、自身も東京で働き始める。そこでも洋は恵美子を拒絶するわけだが、最終的には恵美子を好きになってしまい同棲を始める。
そんな中、居酒屋で出会ったサラリーマンと流れでセックスをしてしまった恵美子は、それを洋に打ち明ける。
洋は激昂するが、恵美子は「あなたと同じことをした私が憎い?」と問いかける。
ひと悶着あった末、恵美子は実家に戻り海をみつめて終わり。というようなストーリー展開。

洋と別れるだとかの話はなく、"あとはみなさんでお考えくださいみたい"なラスト。
ただ、恵美子の心情の判断材料として以下のED曲の歌詞が参考になる。

誰にでも愛される女に
なればなるほど
だめになってく私がいて
誰からも嫌われる女に
なればなるほど
強くなってく私もいる
あなたどっちがほしいのか
はっきりしてくれなきゃ
たまらないってつぶやいて
私泣くかもしれない

by 泣くかもしれない - 下田逸郎

「誰にでも愛される女」の「誰にでも」というのはまあ説明不要だとして、
「誰からも嫌われる女」の「誰からも」というのはここでは母を指す。
ここには、愛されていない男を追いかけず、大学進学してほしいという母の思いを退けて、恵美子が上京している背景がある。

作中で、恵美子のバイト先の同僚に「彼氏はいるの?」と聞かれ、恵美子は「いる」と答えるも、「大切にされている?」という質問には、 「わからないけど、私は好き」というような曖昧な回答しか出来なかった。
それが他の男と関係をもったとたん(((ただし、この行為は洋への見せつけではなく、相手に求められたから))、普段は自分に執着のないような洋が激昂する様子を見せる。
ここに理解できない男心を感じると同時に、恵美子は「性差」を感じたんじゃないかと思う。
このことから、「海を感じる時」の「海」とは「性(女性)」を指しているのではないかと考えた。

まとめると

ストーリーは悪くないものの「間延び」がつらい。
100分ぐらいにまとまっていたら、よかった気がする。
これから見るという方は、上記点と原作が「純文学」であることに留意してみていただいたほうがよいと思う。
ただし、市川由衣の裸体がみたいというその一心だけであるならば、問題なくみられるはず。*2

海を感じる時 (新風舎文庫)

海を感じる時 (新風舎文庫)

市川由衣 写真集 『 Origine 』

市川由衣 写真集 『 Origine 』



*1:念のためいっておくとヘアはなし

*2:作中、赤ちゃん言葉を使うオプションもあります