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【映画】そこのみにて光輝くをみた感想

「そこのみにて光輝く」をみたのでその感想。(ネタバレあり)

予告


あらすじ

仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知り……。


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感想(原作は未読)

総じてみなさま良い演技。

  • 佐藤達夫(綾野剛)→目をここまでかっと見開いた綾野剛は初めて見た。
  • 大城千夏(池脇千鶴)→ぴったり。
  • 大城拓児(菅田将暉)→いやーすごい、こんな演技が出来る人とは。感服致しました。

まず言いたいのは、菅田将暉すげーということ。
あんまり出演作とかを見てないというのもあるかもしれないけど、
こんなふっきれた役柄が出来るイメージじゃなかったので、純粋にギャップにやられた。
違和感もなく、大変素晴らしかったです。文句なしのMVP。

≪ストーリー・演出≫
①達夫が千夏になぜ惹かれるか?(またはその逆)のところが見えない。
恋愛要素がある作品だけに痛い、感情移入が出来ないからだ。
千夏が一家を養うために体を売っていたり、寝たきりの父親の性欲処理を母親の代わりにしたりと、
"普通"の恋愛物語の状況でないこともひとつの要因である。
境遇が境遇だけに悟りに近いものを開いており、千夏は徹底的に甘えない。
(千夏は客観的に自分を見ることが出来、自分の価値をある程度測ることも出来ている。
甘えることは客観的にみると彼女にとってすごく惨めなことなのかもしれない。)
そのため、孤独な達夫だが、千夏にだけは必要とされている感じも薄く、本能的に千夏を好きな達夫という見え方が近い。

②達夫が過去に苦悩する理由もエピソードが弱すぎる。
事故で死なせてしまった人との関係性が仲が良かったんだろうなレベルにしか感じられないので、
いまいち気持ちが乗ってこない。とってつけたようなエピソード。

演出については2点良いシーンがあった。

  • 千夏が父親の性欲処理をしているシーンを目撃してしまった達夫が紫陽花の茎を握りつぶすシーン
    →紫陽花の茎から出る汁が精液を連想させるシーンだと個人的に解釈したが、いいなと思った。

  • ラストの引きで朝日が出るシーン
    →「そこのみにて光り輝く」って感じが出ててよかった。*1
     ただ、そのあと「そこのみにて光り輝く」ってタイトルロゴが出るのはくどい印象受けたのでなくていいかな。

また、この作品は時期が夏ということもあり、「汗」が際立って演出されている。
どのシーンも汗、汗、汗というある種の熱、暑苦しさをもって物語は進んでいく。
ただ、先ほどの「本能的に千夏を好きな達夫」も暑苦しさの枠に入れるのは少々無理があると思うので、
事象に対して何らかの説明をして、視聴者に想起させてくれたほうが個人的にはありがたい。

≪原作との比較≫
このサイトを読むと原作と映画でそれなりに違いがあることが読み取れる。

千夏は、「あたしもね、今の商売に入る時、海を渡ろうかと思ったわ」などと語り始めます。千夏は顔を達夫の胸におずおずと押し付け、「あの家を出たい」「そのためなら何をしてもいい」とささやきます。

このシーンは映画にはなかった。
上述の①の部分と関わってくるところで、わざわざ省くシーンでもないと思うのだけど、なぜだろう?

また、ラストシーンも心に染みました。 拓児が千夏をひやかす男を刺してしまい、警察に出頭してから、バラックに住む義母は、ますます頑なに、「ここであの子(=拓児)を待つ」と、バラクを離れようとしなくなりました。 それまで、義母はあまり大きな存在としてはストーリーに関わってこなかったのですが、ラストシーンに来て、といいますか、「ここであの子を待つ」というひと言によって、「そこのみにて光輝く」という作品が義母の作品であるとも思えるほどの存在感を放っていました。 達夫の中に何かがあるように、義母の中にも譲ることのできない何かがあるのだと思いました。 思えば、両親の墓の管理費を律儀に送ってくる達夫の妹にも、拓児の自首を聞き「警察になんかには、とことん楯をついてやるわ。あんたなんかに、あたしらのことなんてわかりっこないわ」と達夫にまくし立てた千夏にも、「お袋がひとりになる。後を頼みたい」と達夫に母親を託した拓児にも、譲れないものがあるのかもしれません。

原作のラストのほうが、"拓児"と"母親"の関係性からも「そこのみにて光り輝く」というのが感じられて、圧倒的にいい。
映画のラストからは"達夫"と"千夏"だけの関係性しか感じなかった。
ただ、これは映画からも感じた人はもしかしたらいるかもしれない。

また、原作に②のエピソードは(やっぱり)なかった。
うーん、原作にないことするなってつもりは全然ないけど、やはりもう少し深堀りすべきだったと。

まとめ

この原作を映画の尺にまとめるのは改変必須なので難しい気がする。
上手くまとめていると思うけど、上述の点が気になった。
全体としては可もなく不可もなくな出来で、菅田将暉好きな人にはぜひ観てほしいといったぐらい。

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*1:頭悪そうな文