西川美和監督作品。
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あらすじ
故郷を離れ、東京で写真家として活躍する弟・猛(オダギリジョー)。
母親の法事で久々に帰省し、兄・稔(香川照之)が切り盛りする実家のガソリンスタンドで働く昔の恋人・智恵子(真木よう子)と再会する。
猛と智恵子とは一夜を過ごし、翌日、兄弟と彼女の3人で渓谷へ遊びに行く。
猛が智恵子を避けるように写真を撮っているとき、智恵子が渓流にかかる吊り橋から落下する。
その時、近くにいたのは稔だけだった。
事故だったのか、事件なのか?
裁判が進むにつれ兄をかばう猛の心はゆれ、そして証言台に立ち最後に選択した行為とは……。
感想
これもまたまた俳優陣の演技が絶妙に見事だ。
猛、稔、智恵子、それぞれの心情の「ゆれ」を上手く表現していた。
西川監督はやはり間とか空間表現を得意としているみたいで、今作もその点は相変わらずよかった。
自由奔放な猛と実直な稔。
2人は対象的で、容姿もまるで違う。
男性が観た場合、どちらかを自分に重ねてみてしまうのではないだろうか。*1
容姿という先天的な要素は極めて重大で、その後の性格形成にも大きく影響を与えるし、
ひいては"身の程をわきまえる"という価値観までつながってしまう。
Googleで『真木よう子』といれると、サジェストに『真木よう子 整形』と出てくる。
真木よう子って美人だよねといったとき、でもあの人整形だよと言ってくる人とは、分かりあえる気がしない。
仮に、真木よう子が整形だったとして、先天的か後天的かでなにが違うのだろう。
閑話休題。
「ゆれる」では肝心の選択、"どういう行動をとったか"については明らかにされない。
- 智恵子は橋から落ちたのか?落とされたのか?
- 出所した稔は猛の「一緒に家に帰ろう」という呼びかけに対し、どう行動したのか?
まず、
- 智恵子は橋から落ちたのか?落とされたのか?
について。
「ゆれる」は、兄・稔が弟・猛へ対して復讐をする物語であるから、
智恵子が橋から落ちたのか、落とされたのかというのは後から考えると、
(稔にとっては)どちらでもいいと思う。
ここでの主テーマは、稔が思っていた本心を猛に伝えることであって、
捕まる・捕まらないといった事象はあまり関係してこないかと。*2
なので、私としては落としてはいないんじゃないかなあと思うぐらいの考えにとどめ、
深い考察をするのはやめようと思う。
- 出所した稔は猛の「一緒に家に帰ろう」という呼びかけに対し、どう行動したのか?
について。
ここでの行動はつまり、「バスに乗るか乗らないか」ということ。
今作において渓谷の橋を渡ることは、「東京へ行くこと(田舎を出ること)」のメタファーとなっているわけだが、
智恵子、稔はどちらも「橋を渡りたい」という共通の願望があった。
しがらみから解かれた稔は「バスに乗る(田舎を出る)」ことを選択するのが素直な流れだと考える。
ここで描かれるのは兄弟愛なんかではない。兄弟といえども分かりあえないふたりである。*3
まさにこのキャッチコピーがぴったり。
だいたいのシーンのつながりは1回見ればなるほどーって感じでわかったんだけど、
1点腑に落ちない点があって、それは渓谷に向かう車中で智恵子が物憂げな表情を見せるところ。
この表情がなにを意図していたのか最後まで分からずじまいだった。
自分の進路についての悩みというようには受け取れなくてもやもやした。
うーん、どういう意味だったんだろう。
なにはともあれ、正直、映画って外れ作品がほとんどだと思っているけれど、最近は当たりばかり引いていて嬉しい。*4
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